医療法における医師の「開業」とは、「臨床研修等修了医師が個人で診療所を開設すること」です。
(「医院」や「クリニック」も、医療法においては「診療所」と呼ばれます。)

ただし、単に診療所を開設するだけでは、公的医療保険による診療(いわゆる保険診療)を行うことはできません。
つまり、自費診療しか受け付けられないことになります。

保険診療を行うには、診療所開設の手続きをした後で、保険医療機関として指定を受けるための手続きが必要です。
そこで、医師個人が両方の手続きを経て無床診療所を開き、保険診療を行う場合に必要な許認可手続きについて、一般的なものを整理してみます。
(個人開業医としての手続きであり、その他事業所一般に適用される各種法令等については、網羅していません。)

診療所を開設するときに必要な手続き

*開設の要件

・臨床研修を終了した医師が管理者として常駐する。
・常駐する医師が3名以上いる診療所は、原則として1名以上の専属薬剤師を置く。
・診療所は清潔な状態を維持するとともに、衛生・防火・保安上も安全でなければならない。
・診療所で使用する電気・光線・蒸気・ガス等の構造設備には、危険防止措置を講ずる。
・診療所の管理者は次の事項を、診療所入口、受付または待合室付近の見やすい場所に掲示する。

1.管理者の氏名
2.診療を担当する医師の氏名
3.診療日・診療時間

*開設手続

臨床研修等修了医師が診療所を開設するときは、許可を受ける必要はありませんが、開設後10日以内に都道府県知事に届出なければなりません。
(平成16年4月1日以前に免許を取得した医師は、臨床研修を修了しているものとみなされます。)

ただし、設備基準等に関する要件を満たしていないと判断される場合は、保健所が届出を受け付けなかったり、保留する場合があります。
事前に所轄保健所と協議しておけば、スムースに届け出を済ませることができます。

保険医療機関になるために必要な手続き

*保険医療機関指定

保険診療を行うためには、健康保険法に基づく保険医療機関としての指定を受けなければなりません。
この申請は、診療所の開設者が所轄地方厚生局長(厚生局都道府県事務所)宛に申請します。

この指定を受ければ、健康保険法および国民健康保険法に基づく療養の給付を担う保険医療機関となり、保険者に対して診療報酬を請求できるようになります。

申請に必要な書類は、次のとおりです。
1.診療所開設届出書
2.保険医の氏名・登録の記号および番号・担当診療科名を記載した書類
3.管理者を除いた医師の数を記載した書類
4.通常週の診療日と診療時間の状況 を記載した書類
5.その他指定の適格性等が確認できる書類

保険医療機関指定の申請は通常、毎月中旬に締め切られます。
その後、その月の下旬に開催される社会保険医療協議会の都道府県部会の審議を経て、翌月1日付で指定を受けることになります。

実際に保険診療を開始できるのは、保険医療機関指定を受けた日付以降の日になります。

診療所を開設するうえでは、とても重要なことですから、前もって所轄の厚生局都道府県事務所とよく協議し、申請時には指定希望日を添付書類に記載するのが通例です。 保険医療機関指定は、指定された日から6年間有効です。ただし、個人開設の保険医療機関については、申し出がない限り自動更新されるます。

*施設基準・特掲診療料の届出

診療報酬請求の際、算定に要件がある項目があり、個別に届出を済ませておかないと、算定・請求ができないこともあります。

この個別の届け出の前に、 先ほどの保険医療機関指定を受けておくのが原則です。

診療開始と同時に算定・請求ができるようにしておきたい場合には、所轄厚生局都道府県事務所と相談して、保険指定申請時に個別要件の届出書を預ける等の方法で対応することになります。